遅れてしまったが、ごく簡単なミクロ経済学をつかい「レントの経済学」について述べてみたい。


参考文献:常木『公共経済学』新世社、青木『比較制度分析にむけて』NTT出版、ウィットマン『デモクラシーの経済学』東洋経済新報社


右下がり需要曲線、右上がりの供給曲線によって表せられる市場を想定する。
そこで完全競争が行われれば、価格・数量ともに、需要曲線・供給曲線の交点が均衡価格(数量)となり、社会的余剰が最大化される。
ここで、なんらかの原因で政府が数量規制を行い、供給される数量が、完全競争で達成されるべき均衡数量よりも、少ない場合を考える。
この場合、価格は先の均衡価格より高くなる。
このことにより、いわゆる死加重損失(dead weight loss)が発生し、社会的余剰が低下する。
社会的余剰を最大化するには、最初に述べたように、完全競争を行えばよいのだから、本来なら政府は数量規制をやめ、市場を完全競争市場にすべきである。
そうできない場合、政府に何らかの作用が働いているとみるべきである。
その作用がレントシーキングである。
以下、完全競争のときと不完全競争のとき(数量規制のとき)との、生産者余剰と消費者余剰の変化に注目しレントシーキングのメカニズムについて分析してみる。
図を書いて見れば、以下のことが簡単に分かるだろう。


生産者余剰:不完全競争のとき>完全競争のとき
消費者余剰:不完全競争のとき<完全競争のとき
(社会的余剰:不完全競争のとき<完全競争のとき)


ここから明らかな通り、数量規制がなくなれば、生産者余剰は低下する。
その低下によって失われるものを、とりあえず「レント」と呼ぶ。
*1
生産者はレントを保持するために、余剰の低下を防ぐために、政府に圧力をかける。(つづく)

*1:もともとは、周知の通りrent=地代であり、数量規制によるものは、「独占レント」と呼ばれるべきのであるかもしれないし、長期的には多数の企業の参入により生産者余剰自体が消滅するので、右上がりの供給曲線による生産者余剰自体が「準レント」と呼びうるものである。しかし、以上のことは議論を簡単にするため、とりあえず考慮しない。