悲望

悲望

 
 

神田川デイズ

神田川デイズ

 
 『悲望』所収「なんとなくリベラル」及び『神田川デイズ』に触発された個人的でとりとめのない殴り書きの随想

 
 大学へ入ってからだろうか、政治的な場面を多々体験したのは。
 卒業したのは、ほんの数年まえなので、結構最近である。
 高校までは、政治的な(?)思い出といえば、小林よしのり戦争論』をなぜか高校にもっていったくらいか。いや、それだけじゃなく、そういや、バーストもなぜかもっていったこともある。その中のサイコビリー特集の写真を友人が切り取って黒板に貼り付けたり、文化祭のカレーのメニューの欄に、日章旗や鍵十時を書いたりもした。両方とも教師から掲示をやめることをやんわりと求められ従った。これくらいか。
 全国的にどうなのかはわからないが、私の出身大学は、時代(00年代前半)のわりに結構政治的な雰囲気が強かったのではないだろうか。私は、サークルには入っていない。3つくらいの音楽とか映画関係のサークルに入ろうとしたこともあったが、雰囲気になじめず、やめた、とういか入るのが無理だった。
 サークルといえば、左翼サークル(ダミー?)とかも結構あったはずだ。
 独特の変な字で書かれた看板は一年中立っていた。左翼的主張を書いた新聞もよく配られていた。たまに、政治サークルの人が、戦争反対とかいって、アジ演説らしきものをやっていた。
 斉藤貴男や上野俊哉の講演会(?)をそれぞれ一回みた。特に、斉藤貴男はよく講演会をやっていた気がするが、開催していた団体が怪しげだった。上野俊哉の講演会は音楽流したりしてた。
 酒井隆史があのころ夜間の学部で授業をもっていて、たまに授業にもぐった。ヒップホップ(確か、パブリックエネミー?)とかゴダールブラックパンサー党がでてくるの(確かワンプラスワンだったような)とか、昔の歌−藤圭子とか岡林信康とか−、野田勉『ブラックマシンミュージック』を紹介したりして(ほかにもいろいろやってただろうが、もう忘れた)、結構熱心に話を聴いた記憶がある。
 ECDもみた。そのとき、酒井隆史とか小田マサノリとか政治サークル所属らしき人が集まって会談みたいなことをやってた。それが終わったあと、写真をとってた人(公安?)と政治サークル所属っぽい人がなんかもめてた。そのとき、周りでみてるひとはあまりいなかった。私は、ずっと傍観していた。もめているのを見ているのが少し面白かった。その後、ECDがサックスを吹きながら、彼らは大学をデモ行進(?)した。ECDの存在自体そんなに知られていなかったころかもしれない。今もたいして知られてないかもしれないが。*1
 数回、大杉重男の授業にもぐったりもした。大杉は柄谷行人の話をずっとやってて、『近代文学の起源』や『探求』のコピーやら柄谷と浅田とデリダの鼎談が載った『朝日ジャーナル』のコピーを配って、なんか話してた。履修者はあまりいなかった。
 二年のとき、教養ゼミみたいなのを履修し、そのゼミでは岩波新書岩波文庫*2ばっかり読んだ。そのゼミの教員は、岩波文化人だったんだろう。多分。「世界」にもたまに寄稿してたし、岩波新書も書いてたし。教授は私達の書いた文章にすべて目を通し、よく添削してくれた。「なんとなくリベラル」な人がいた。数年後、彼女がフェミニズムについて論文を書き表彰されていたのを、ネットで知った。人違いかも知れないが。卒業間際に、みんなで飲み会を開催する旨の連絡があったが、私は行かなかった。
 ほかに、学部横断のゼミみたいなのも履修した。ここには「なんとなくリベラル」な人がたくさんいた。生ぬるいリベラルな発表がなんとなく続いて、単位にも関係ないし、授業に出るのをやめた。
 三年になり、迷った末に国際ミクロ経済学的なことをやるゼミへ入ろうとし、応募した。標準的な経済学のゼミなのに、選考の書類でなぜか、丸山真男福澤諭吉の『文明論の概略』(だっけ?)について書いた岩波新書について、無駄にあつく、勘違いして、語ってしまった。それが直接的な原因かどうかわからないが、選考に落ちた。その後、岩井克人貨幣論』について一万字を書くことが課題とされたゼミへ応募し、選考に受かった。といっても、その選考に落ちた人はいないが。そのゼミでは、ウォーラステインや青木昌彦とかを読んだ。そのゼミで私は、ウォーラステインと森嶋=置塩=マルクスの定理の関係を、勝手に解釈して述べて、意味不明は発表をした記憶がある。
 四年になり、各々の学生が卒論の発表をした。半分以上のゼミの学生の発表は「なんとなくリベラルな」―あるいはよかれ悪しかれ経済学からは程遠い内容だった気がする。当初の私も含め。私は途中から、そのころ読んだ、数冊の本の影響かもしれないが、(ミクロ)経済学をもとに、卒論を書くこととした。卒論の出来は、ちょっとは経済学の論文らしきものになったようなきがする。教科書・論文集などを簡単にサーベイしただけのものだが。文化左翼に批判的になった。いや、正確に言えば、批判はあまり公言しなかった記憶があるが、文化左翼が心情的に、結構嫌になってきた、あるいは、嫌になったというより、飽きてきた、といった方が正確かも知れない。経済学を専攻していたにもかかわらず、卒業間際になって、やっと経済学に取り組み始めた。かなり、中途半端な形ではあったが。だが当然、経済学に取り組んだからといって、就職できるわけではない。
 あまり就職する気が起きなかったが、運良く何とか新卒で就職した。職場では組合*3に嫌々入った。今年は、出る人がいないからという理由で、組合の会議にたまに出ている。そこでは、左翼的(労働者的?)な声はよく聞こえるが、なんとなくリベラルな声はあまり聞こえない。
 
 
 

*1:ほかにも、辻本清美とか姜尚中とか大仁田厚とか田原総一郎とか小室直樹とか小泉純一郎とか安倍晋三とか宮澤喜一とか筑紫哲也とかオリックス宮内とか民主党の枝野とか共産党の穀田とかのそのほかにも結構いろんな人(忘れた)の講演会(授業?)を聞いた記憶があるが、今となっては、何が話されたか、ほとんど覚えていない。

*2:例外は中公新書一冊とマルクス『ルイボナパルトブリュメール十八日』

*3:私の職場の組合はオープンショップ制